鄙びた首都

 ビエンチャンは鄙びた首都である。ビエンチャン市が属するビエンチャン・キャピタル全体では人口約60万人であるが、都市部の人口は13万人程度だという。車が少ない。街を歩く人の姿が少ない。高層の建物や商業施設が少ない。旅行者の感想記でも、チベットのカトマンズやミャンマーのヤンゴン、ニカラグアのマナグアよりも田舎びている、と書かれている。筆者は、岡山市に3年間勤務していたことがあるが、岡山市の方がはるかに活気にあふれている。
 ラオプラザホテル前の通りは、ビエンチャンの「銀座通り」と呼ぶべきところであるが、個人商店の土産物屋かレストラン(「食堂」という言葉の方がぴったりする)、それとホテルが並んでいるだけ。5分も歩くと商店街は途切れてしまう。外国人旅行客も行くところがないのか、食堂で所在なげにココナッツジュースを飲んだりして時間をつぶしている。のんびりした空気が蔓延している。
 ここでは犬ものんびりしている。犬は放し飼いが多い。人間をほえたりはしない。人と同じように、通りを所在なげにぶらぶらしていて、こちらが近づくと、「どうも、どうも」という感じで道をあけてくれる。人も犬も、スローライフのまちである。


交通事故には要注意

 しかし、街を散歩するときには、いくつか注意する点がある。ひとつは、道路の歩道が整備されていないことだ。道路の端にある排水路の上蓋を歩道がわりに歩く羽目になるが、しばしばこの上蓋が壊れているため、よく下を向いて歩かないと足を排水路に踏み落とす恐れがある。特に、夜になると街灯の光が乏しいので、一層用心しないといけない。
 もう1点は、交通事故に注意すること。近年、中国製のオートバイが安く輸入されるようになったということで、オートバイの数が急増している。道路には信号がないのが普通で、道路を横断するためには、自動車以外に次から次へとやってくるオートバイをうまくかわさなければいけない。自動車もオートバイも歩行者がいるからといって、スピードを落とすことをしないので、歩行者の方で注意しなければいけない。
 だいたいオートバイの運転手が免許証を持っているかどうかが疑わしい。それに2人乗り、3人乗り、さらには4人乗り(ハンドルと運転手の間に子供、後ろの荷台に2人)まで走っている。ヘルメットをしている人はごくわずかである。事故が起きたら大変だなと見ていたが、実際、バイク同士やバイクと車の接触事故に何度か遭遇した。


タラート・サオ

 「銀座通り」には、百貨店もスーパーも肉屋も八百屋も果物屋も見当たらないが、ビエンチャン最大の市場「タラート・サオ」に行くと、数え切れないほどの個人商店が店を構えている。国営のデパートもある。食料品、文房具、雑貨、衣料品、時計、電化製品、寝具、さらには土産物や漢方薬など、実にさまざまな商品が展示されている。ラオスの特産品であるスカーフやシンと呼ばれスカートなど、あまりにも種類が多いので、選択に困るほどである。
 また、金のネックレスやイアリング、時計など金製品を売っている店も多い。所得水準が低いのに不思議だなと思うくらいに客が来ている。実は、ラオスでは、海外に住んでいる家族からの送金がある人や、税務署が把握していない所得がある世帯も多く、自国通貨のキープに信頼性がないので、金や銀の製品に換える人が多いという。
 ちなみにキープの交換レートは、1ドルが約10,500キープ。1円が約95キープ。クレジットカードを使える店は極めて限られているので、キープを持つことになるが、1万円は95万キープにもなり、とても財布には入らない。輪ゴムでたばねた分厚い紙幣をかばんの中に入れて持ち歩くということになる。ドル紙幣やタイのバーツ紙幣は、そのまま通用する。


タートルアン

 ビエンチャン市内の最大の観光名所といえば、「タートルアン」である。正方形の形をしていて、外壁の一辺は約85メートル。入り口を入ると、高さ45メートル、一が辺約60メートル、3段構造の黄金の塔がある。タートルアンは、外壁も塔も金色で、しかも仏塔の金色は最近塗り替えたとかで、光を反射してきらきらしており、背景の青空に映えてことのほか美しい。ビエンチャンだけでなく、ラオス全土のシンボルとなっている。まぶしいほどの金色を見ていると、ラオス人は金が本当に好きなのだと実感する。
 旧暦12月の満月の日を中心に行われるタートルアン祭は、ラオス最大級の行事で、ラオス全土から僧侶が集合し、広場に人々が集まって、「大読経祭」が行われるという。また、広場には夜店が立ち並び、ラオスにしてはどこにそんなに人がいるのかと驚くくらいに、大人も子供も集まるという。


凱旋門

 ビエンチャンに凱旋門と聞くと驚くが、本当にパリの凱旋門そっくりの建物がある。ラオスは、フランスの植民地であったのでその影響かと思ったが、建設が始まったのは、独立後の1960年代からで、内戦で戦死した兵士の霊を慰めるために建てられた戦没者慰霊塔であるという。以前は、アーヌサワリー(記念碑)と呼ばれていたのが、2000年に、パトゥーサイ(凱旋門)と名前が変更されたそうだ。
 この建物は、入場料1000キープを払って中に入ると、階段を登って上に行くことができる。上部にテラスがあり、さらにその上に小さな展望台がある。ここに出ると、涼しい風が吹き抜けていて、360度の視野でビエンチャンの風景が見える。ビエンチャンのまちの様子を知るには、格好の場所である。上から眺めると、実に緑が多いことがわかる。ダウンタウンからすぐのところに、田園地帯が広がっている。文字通り「田園都市ビエンチャン」である。
 ところで、この凱旋門は、資金の問題などから現在も完成しておらず、いまだ工事中という。まるで、スペインのガウディの建造物のようである。ビエンチャンに来たら、凱旋門に登るべし。

スローライフの都市 ビエンチャン

【 週刊社会保障 2004.7.12 №2291(法研) 】

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