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ラオス労働社会福祉省

 主な官庁の建物が、首相官邸のある凱旋門(パトゥーサイ)周辺に位置している中で、労働社会福祉省は、1993年創設という新しい省ということもあり、ビエンチャンの中心部に建てられている。
 ラオス労働社会福祉省は、コの字型をした4階建ての建物。全体的に緑色の外観で、外からみるとしゃれた感じがする。向かって左側の1階部分に、私の事務室を用意していてくれた。机と応接セットが置かれ、後に電話が引かれた。日本の事務室と比較すると、極めて質素であるが、事前に部屋のペンキを塗り替えるなど、ラオス労働社会福祉省が気を使った準備をしてくれていたことを知る。
 日本の厚生労働省とは異なり、公衆衛生や医療関係の行政を担当する保健省が別にあり、こちらも、主な官庁群とは離れて単独で設置されている。


ソンパン大臣にご挨拶

 ビエンチャンに到着した2月16日午後、たまたま海外出張が重なった厚生労働省能力開発局外国人支援室の島崎係長と一緒に、ソンパン労働社会福祉大臣を表敬訪問した。島崎氏は、日本の中央職業大学校に対するラオスからの職員派遣や、アセアン諸国の労働行政担当職員の研修の説明およびビエンチャン市内の職業訓練校の視察のために、ラオスに出張してきたのであった。
 ソンパン大臣は、フアパン県の知事を約15年間務めた後、新設された労働社会福祉省の副大臣となり、6年前から大臣の職に就かれている。当然の事ながら、労働社会福祉行政に大変詳しい。年齢は50代半ば。帰国後、『ラオス概説』(めこん社刊)をひもとくと、ラオス人民革命等の序列では20番目(2003年2月現在)となっていた。なお、ラオスでは、人名は姓ではなく名前で呼ぶことが一般的であり、「ソンパン」も名前である。

労働社会福祉省の構成

 ラオス労働社会福祉省は、2人の副大臣と、大臣官房及び9つの局で構成されている。9局は、日本語訳で表記すると、監査局、人事局、労働局、社会福祉局、社会保障局、年金高齢者局、退役軍人局、UXO(不発弾処理局)となる。
 本省の職員数は、約160人程度。地方(県及び郡)の職員も含めると、約1,030人になるという。ちなみに、ラオスの行政機構は、中央政府のほか、18の県(Province)、142の郡(District)、10,868の村という構成である。県知事は中央政府の任命制であり、行政機関も中央政府のタテ割となっている。すなわち、県に行けば、労働社会福祉局があり、郡にもその担当職員がいるという具合である。郡レベルになると、担当職員が1人か2人ということも珍しくなくなる。
 まず、大臣官房であるが、官房長はプーキオ氏。今回のカウンターパートである。そして、官房長配下のカムケン計画課長とワンポイン計画課課員が、今回の調査の段取りの設定、地方出張のスケジュール作りなど、さまざまな面でお世話をしてくれた。プーキオ氏は、1985年に計画調整委員会の役人となった後、タイに1年間英語研修、ルアンパバーン県で1年間行政研修、その後、1993年に労働社会福祉省の官房に移る。次いで、国会の外務担当事務局の副官房長、2000年から1年間イギリスの大学に留学し、国際関係論の修士号を取得、帰国後労働社会福祉省に復帰し、官房長代理から最近官房長になったという多彩な経歴の持ち主。英語が堪能で、40代前半という若さながら、次は局長かという俊英である。


各局の所管業務

 検査局は、本省及び地方の出先機関の会計監査や行政監査を担当している。以前は内閣府に所属していたが、1999年に労働社会福祉省に設置されたもの。政府全体の中央検査局の支所でもある。日本でいえば、行政管理局と会計検査院の支所が各省に設けられたようなものである。
 人事局は、本省や県・郡の地方労働社会福祉局の職員の人事管理や研修を担当している。また、毎年20人くらい新規採用を行っている。統一的な国家公務員試験があるのではなく、就職希望者に対して一定期間研修を行い、その間の能力等を判断して採用決定をしているという。
 労働局は、労働者保護、外国人労働者管理、職業訓練などを担当している。労働社会福祉省では唯一の法律と言ってよいで労働法を所管している。出先機関としては、外国人労働者管理の実務を行う雇用サービス公社や職業訓練校を持っている。ビエンチャン市内にある職業訓練センターでは、700人が訓練を受けている。日本からもJICAのシニアボランティア4名が事務運営や講師指導の支援を行っている。
 社会福祉局は、低所得者対策、ホームレスや親のない子ども、交通障害の子ども、タイに非合法に入国し強制送還された子ども対する福祉施策などを担当している。ユニセフや国連などの国際機関、あるいは外国のNGOがこうした子ども達を支援していることが多く、これらと連携をとりながら施策を展開。また、KR1という日本からの食糧援助のラオス側の窓口でもある。


社会保障制度が始まる

 社会保障局は、公務員に対する社会保障制度の運営と、民間の被用者向け社会保障制度を担当している。前者は、1993年から実施、後者は、2001年から実施されている。後者の実務は、社会保障機構が担当している。この事務所は、労働社会福祉省から車で15分くらいの距離にある民間の建物の中にある。機構のソンナク局長は、何度もアセアンの会合に出たり、日本に行ったりするなど、社会保障制度の拡大に向けて熱意があり、やり手の印象を受けた。日本の援助で、自前の事務所ビルを建設したいというのが局長の要望である。もともとは電気関係の技術者で、1996年に副首相から社会保障の仕事をしてみないかと命令を受けたという。
 年金高齢者局は、公務員の年金制度の運営、高齢者向けのプロジェクト事業などを担当している。年金制度の運営にあたっては、コンピュータなどの設備の不足、スタッフの経験不足が課題。また、今年度は、韓国の支援によりホームケアのプロジェクトを実施するという。 
 退役軍人局は、戦争や革命に参加した退役軍人に対する福祉施策を担当している。また、障害者に対する職業訓練や社会参加の事業も担当。障害者センターは、全国に12あるという。

ラオスの労働・社会福祉行政

【 週刊社会保障 2004.7.5 №2290(法研) 】

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