障害者支援費制度の施行

 2003(平成)年4月から、障害者福祉分野において、支援費制度が施行されている。支援費制度は、従来の措置制度を改め、利用者の立場に立った障害者福祉サービスの利用方法である。利用者本位、サービスの選択、事業者や施設との契約に基づく利用等、介護保険制度におけるサービス利用方法と同様の理念を目的とした制度改正である。介護保険制度との最大の相違は、財源が、国及び地方自治体の予算、すなわち租税等の公費財源に基づくという点である。平成15年度政府予算では、支援費は国から地方自治体に対する補助金として位置付けられるので、厚生労働省では、国庫補助金の配分基準を地方自治体に提示した。
 しかし、特に訪問介護の配分基準について、障害者団体から猛反発を受けた。配分基準は、サービス利用の上限となり、従来の利用が制約を受け、障害者の自立を損なうことになるという批判であった。この問題は、最終的には厚生労働省と障害者団体との間の話し合いで、厚生労働省から、補助金の配分基準は設定するが個人の利用時間の上限ではないこと、交付基準は今後利用状況を踏まえて見直すこと、障害者が参加する検討会を設けて基準の見直しを話し合うこと等の説明があって、一応の決着をみた。
 支援費制度は、スタート前から波乱含みの展開をみせたのであった。


若年障害者問題

 介護保険制度では、検討時点から「若年障害者問題」と呼ばれる制度骨格に関わる課題を抱えている。65歳未満の障害者(若年障害者)に対して介護保険を適用するか否かという課題である。現行制度では、65歳以上の高齢者(第1号被保険者)に対しては、従来、障害者福祉で対応してきた介護サービスについて、介護保険制度に切り替えることとなった。しかし、若年障害者(第2号被保険者における障害者)については、特定疾病を原因とする要支援・要介護状態のときのみ介護保険の給付が行われ、それ以外の原因の場合には障害者福祉の対象分野のままとされた。その結果、前号の本欄で説明したとおり、第2号被保険者中の要介護者等の数は約12万人、保険給付額は第1号被保険者の2.5%(2000年度)という小さなものとなり、第2号被保険者は基本的には保険給付がほとんどない保険料負担者と位置付けられたのであった。
 なぜ、若年障害者を介護保険の給付対象から外したのだろうか。介護保険法案を国会に提出するため最後の審議が行われていた1996年6月10日の身体障害者福祉審議会の意見具申が、その理由を明示している。それによれば、①障害者施策が公の責任として公費で実施すべきとの関係者の認識が強いこと、②身体障害者以外の障害者施策が一元的に市町村で行われていないこと、③障害者の介護サービスの内容は高齢者に比べて多様であり、これに対応したサービス類型を確立するには十分な検討が必要であること、④保険給付に当たっては、障害者の介護サービスをはじめとして現行施策との調整が必要であること、等の理由があげられ、引き続き検討が必要であるとされた。つまり、若年障害者に対する介護保険適用は将来の検討課題として、当面は、従来の障害者福祉施策により対応することとされたのである。当時、関係者の間では、介護保険の適用よりは、障害者プランに基づく基盤整備の方が先決であるという認識であった。


ノーマライゼーションの理念

 介護保険法が制定(1997年12月)されてから6年、その間、社会福祉基礎構造改革により障害者福祉分野では支援費制度が創設されるという大きな変化があった。現時点で、若年障害者に対する介護保険適用問題を考えると、どのような結論になるだろうか。
 まず、理念的に考えると、65歳を境に介護サービスに対する利用手続きの制度を区分する合理的な理由は乏しいということであろう。介護保険制度と支援費制度が、ともに利用者本位やサービスの選択、契約による利用をねらいとしており、さらに若年障害者といえども介護保険料を負担しているのであれば、若年障害者に対する介護サービスを介護保険給付から外すことの説明の方が難しい。障害者福祉の基本理念であるノーマライゼーション(障害者も普通の市民と同様の生活を送ることが望ましい)の考え方を援用すれば、若年障害者も介護保険給付の対象とすることがふさわしい。
 実際の問題は、実務的な面である。①介護保険の給付水準でこれまでの障害者福祉の水準に対応できるのか、②介護保険の要介護認定基準を活用できるのか、③保険財政増大で保険料負担が重くなるのではないか等である。①については、介護保険は社会保険としての性格から同一の保険事故には同一の給付が原則であり、個別性に着目した給付は不適当である。したがって、介護保険給付を基本として、特別の事情にかんがみた給付が必要な場合には、租税財源等による公的補助を上乗せするというのが現実的な対処法になる。②については、あらためて調査研究事業が必要であるが、身体障害者に対しては現行の要介護認定基準がある程度当てはまるのではないかと想像される。③については、租税負担が保険料財源に変化するもので、社会全体の負担は変わらない。
 いずれにせよ、結論を先延ばしにしてきた課題であり、今回の全般見直しの機会に、実務的な問題にも目を向けてきちんと議論をしていく必要があるだろう。


(今月のポイント) 支援費制度

 2000年の「社会福祉事業法等の一部改正法」による身体障害者福祉法、知的障害者福祉法等の改正によって、措置制度に代わる新しいサービス利用方法として導入された制度。従来、障害者福祉サービスは、行政機関がサービスの受け手を特定し、サービス内容を決定する措置制度により提供されてきた。支援費制度は、障害者の自己決定を尊重し、利用者本位のサービスの提供を基本として、障害者自らがサービスを選択し、事業者との契約によりサービスを利用する仕組みである。2003(平成15)年4月から施行されている。
 基本的な仕組みは次のとおりである。まず、障害者福祉サービスの利用について、支援費の支給を希望する人は、市町村に対して支援費の申請を行う。その際、必要に応じ市町村から適切なサービスの選択のための相談支援を受ける。市町村は、支援費の支給決定にあたって、障害の種類や程度その他の心身の状況、介護を行う者の状況等を勘案して、要否を決定する。あわせて、在宅サービス費用である居宅介護支援費であれば、支給量と支給期間を、施設サービス費用である施設訓練等支援費であれば、障害程度区分と支給期間を定める。障害程度区分については、各施設支援ごとにチェック項目が設定されており、3段階に区分される。支援費の支給決定を受けた人は、都道府県知事の指定を受けた指定事業者または施設を選択し、事業者または施設との契約によりサービスを利用する。障害者福祉サービスを利用したときには、本人及び扶養義務者は、指定事業者または施設に対して、サービスの利用に要する費用のうち本人及び扶養義務者の負担能力に応じて定められた利用者負担額を支払う。市町村は、費用の全体額から利用者負担額を控除した額を支援費として、指定事業者または施設に支払う。
 支援費制度の対象サービスは、在宅サービスでは、ホームへルプサービス、ディサービス、ショートステイ、知的障害者のグループホーム、施設サービスでは更生施設や授産施設が対象となっている。

若年障害者に対する適用問題

【 第2回 2003年5月 】