法施行後5年を目途にした制度全般の見直し

 介護保険法では、介護保険制度が新しい社会保険制度であり、かつ、新たな介護システムの創設であることから、法律の施行後5年を目途として、政府は、地方公共団体等の関係者の意見を十分考慮しながらその全般に関して検討を行い、その結果に基づき必要な見直し等の措置を行うことが、法律の附則に盛り込まれている。
 附則第2条では、介護サービス提供体制の状況、保険給付費の状況、国民負担の推移、社会経済の情勢等を勘案し、障害者福祉施策、医療保険制度等との整合性、市町村の介護保険事業の円滑な実施に配慮して、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲、保険給付の内容・水準、保険料や納付金の負担のあり方を含めた制度全般について見直しの検討を行うことと規定されている。具体的には、介護保険の被保険者の年齢区分、介護保険給付と障害者サービスとの関係、保険給付の内容等が想定されている。
 本年3月末をもって、介護保険制度は施行後3年間を経過した。「施行後5年を目途とした見直し」というと、2005(平成17)年のことになるが、この年に見直しを行うとなると、そのための法改正や予算編成等を2004(平成16)年中に行う必要があり、その準備のためには本年中に検討作業を行って方向性を定めなければならない、というスケジュールになる。既に、厚生労働省では、こうしたスケジュールを念頭に置いて、昨秋から老健局で内部的な検討作業を始めた、と報じられている。昨年来からの老健局の最大課題であった介護報酬の見直しが2月に決着したので、これから制度全般の見直し作業が本格化するであろう。そこで、この新連載では、厚生労働省の担当部局である老健局とは一歩離れた立場から、私見を交えつつ、介護保険制度見直しの主要な論点とその方向性について、解説していくこととする。


第2号被保険者の位置付け

 わが国の介護保険制度は、「高齢者のための介護保険」であって、高齢者以外の若年者の影が薄い。高齢者と同様に介護保険料の負担をしながら、保険給付は特定疾病(今月のポイント参照)に起因する要支援・要介護状態の場合にしか適用されない。介護保険の被保険者でありながら、制度から疎外されているような取扱いを受けている存在なのである。
 まず、法律上の処遇について見てみよう。
 第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険制度加入者(被保険者、組合員等、被扶養者)である。医療保険非加入者は、第2号被保険者には該当しない。国民皆保険の日本では、医療保険非加入者は例外的な存在であるが、その代表例が生活保護の被保護者である。生活保護の非保護者は、要介護状態等になっても介護保険の給付は受けられない。介護保険法制定とあわせて生活保護法を改正し、介護扶助を創設したので、この適用となる。しかし、高齢者である生活保護受給者は、介護保険の第1号被保険者と位置付けられているので、65歳を境にして、介護保険では取扱いが異なるという状態になっている。
 次に、被保険者でありながら、被保険者証は、要支援・要介護認定の審査を受けた人や、被保険者証を申請した人に対してのみ交付される。介護保険からの保険給付については、前述のとおり、特定疾病に起因する要介護状態等に限定される。
 一方、保険料については、理論的には第1号被保険者と同等の額を負担する。徴収者は医療保険の保険者で、医療分の一般保険料と一体となって徴収される。介護保険料のうち、健康保険、政管健保及び共済組合の場合には事業主負担が2分の1、国保の場合には国庫負担が2分の1である。法的には、この保険料は、医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納入する「介護給付費納付金」の財源として位置付けられる。このように保険給付とほとんど関連がない拠出金を「保険料」と設定できるのか、事業主負担の根拠はどこにあるのか等、法的に見て論点が多い。


給付と負担の公平を

 昨年8月にまとまった平成12年度介護保険状況報告からデータ面を見てみよう。まず、第2号被保険者の要支援・要介護者数は、約9万人。これは、第2号被保険者全体の0.2%。第1号被保険者の要支援・要介護者数の3.6%足らず。保険給付額は、年額で783億円。これは、第1号被保険者の保険給付額(3兆1506億円)の2.5%。他方、保険料負担を見ると、第2号被保険者は、事業主負担等を含めて、1兆1200億円。介護保険財政全体の約30%を占める。第1号被保険者の保険料負担の5.8倍である。
 以上、第2号被保険者の法的取り扱いと介護保険財政上の位置付けを見てきたが、保険給付と比較して、明らかに過重な負担となっていることや、介護保険料が「拠出とリンクしない税的負担」となっていることがわかる。高齢者医療制度や年金制度において、高齢者と現役世代との間の給付と負担の公平を図ることが、見直しのキーワードのひとつになっているが、介護保険制度でも同様の観点から見直しを行う必要があるだろう。見直しの方向としては、第2号被保険者の給付範囲の拡大と、年齢の引き下げの議論がある。このうち前者については、いわゆる若年障害者に対する介護保険適用問題と関連する。次号は、この点について論じることにする。


(今月のポイント) 特定疾病

 第2号被保険者(40歳以上65歳未満の者)が、要支援・要介護状態になった場合、介護保険制度から保険給付を受けることが認められる、心身の障害の原因である疾病。
 介護保険法では、特定疾病は、「要介護(または要支援)の原因である身体又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって、政令で定めるもの」と定義されている。厚生省では、平成9年2月以降「要介護認定における特定疾病に関する研究会」を開催して報告書をまとめ、審議会における議論も踏まえて、平成10年12月公布の政令に規定を盛り込んだ。政令では、次の15の疾病・症候群が定められている。初老期における痴呆(アルツハイマー病、脳血管性痴呆等)、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)、骨折を伴う骨粗鬆症、パーキンソン病、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性関節リウマチ、後縦靭帯骨化症、シャイ・ドレーガー症候群、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症(ウエルナー症候群)である。
 第2号被保険者の要支援・要介護認定の申請が特定疾病に該当するか否かは、介護認定審査会で審査される。特定疾病以外の事由による要支援・要介護状態については、介護保険の給付対象外である。たとえば、交通事故やスポーツ上の事故などによる要支援・要介護状態に対しては、介護保険は適用されない。ただし、従来どおり、障害者福祉施策は適用される。また、特定疾病による身体障害者や難病患者は、要介護認定等を受けると、訪問介護のような同一のサービスに対しては、原則として介護保険が適用されて障害者福祉施策は適用されないが、その他の障害者福祉施策や難病患者への施策は、受けることができる。

第2号被保険者の取扱い

【 第1回 2003年4月 】

© 2016 by Masuda Institute for Social Security.

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